<おかえり> 

上演時間:2時間
出演者:丞介(父、60代)        太一(長男、30代) 
     早苗(長女、30代)       舞子(次女、30代) 
     礼子(三女、20代)       良枝(早苗の同級生、30代) 
     一成(従兄弟、20代)

     結・心・空(近所の小学生)

〜〜ストーリー〜〜
定年をむかえ、3年前に奥さんを亡くし、今は日々のんびりと過ごす丞介。
近所の公園で現代っ子の小学生に会う。
少女(結)との会話の中で、ふと、今までの人生に忘れ物をして来た気がする丞介。
 一方、家では、女房に逃げられて久しい長男太一が面倒見の良い末っ子、礼子に
嫌味を言われているところに、一人暮らしをしている、自称・キャリアウーマン
長女早苗が参戦。
ひとしきり、兄弟げんかをすると、早苗はそそくさと退散。喧嘩も日常茶飯事だ。
 そこへ、散歩から帰る丞介。そして突然丞介の口から「宝くじが当った」と・・・。
当選金額は1千万円。太一、礼子は狂喜乱舞!家を買うとか車を買うとか、大騒ぎ。
太一は、早苗や次女の舞子には内緒にする様に礼子に言いつける。

そこへ、突然の訪問客、良枝登場。良枝は10年以上も前に行方不明になっていた、早苗達の
幼馴染だ。10年ぶりに訪れた良枝は、“自分の母親が太一達の母親にお金を貸してる”という。
100万円だ。宝くじが当ったと、喜んでいる時に、ジェットコースターの様に気分はブルーに。
太一達は、当った1千万円からすれば、払えない金額ではないが、どんな少ない金額でも
急に惜しくなる。
・・・しかし、丞介は、良枝に100万円を支払うと約束して、良枝は帰って行った。
ところが、その宝くじ、実は当ってはいなかった。丞介が甥っ子の一成が困っていた
ので一芝居うったと言うのだ。
一成は『月刊宝くじ』の記者、「当った人の取材をしたい」と、丞介に、嘘をつかせたのだ。
二転三転する一日。
 早苗も“お金の匂い”を嗅ぎつけてか、飛び込んで来る。『月刊宝くじ』を見てやってきた。
次女、舞子も早苗からの連絡で駆けつける。
女達の狂喜乱舞を見た太一が、いたずら心を起こし、「宝くじが当っていなかった事は
暫く内緒にしておけ」と、礼子に告げる。
 女達の『金取り合戦』が始まる。泣き落とし、脅かし、とありとあらゆる手段を思いつく。
いつの間にか、太一のゲームに付き合わされてしまった丞介も、
子供達の狂喜に飽きれてしまう。
そして、口々に、「お金は欲しいが、父親の面倒はみたくない」と言う子供達の本音を
耳にした丞介。

ある日、飲んで帰った丞介が、「かあさん、かあさん!」と、3年前に死んだ母を呼ぶ様に・・・。
あ然としている子供達の前で、母がまだ生きているかのような言動を繰り返す。
それは、酔いが覚めても続いた・・・。丞介は、死んだ妻からのラブレターを、
10年ぶりに訪れた良枝から受け取っていたのだ・・・。
子供達は、手紙の内容が、余程堪えたのだろう・・・と話し合う。
 やがて太一は、宝くじの当選が嘘だった事と、良枝の母親に100万円の借金がある事を
早苗達に告白する。
そして、大金が手に入るかも知れない・・・と考えたとたんの、自分達の態度の豹変ぶりが、
丞介を追い込んだのだろう・・・反省する。
親思いの末っ子、礼子は、死んだ母の編みかけのセーターを入れた袋の中から、
丞介がはじめて、妻に送った花束のドライフラワーを見つける。
子供達が反省をし、現実逃避をしてしまった丞介に自分達も付き合おうと相談する。
・・・・・・・・・・(中略)・・・・・・・・・・
(公園にて)
結「おじさん、誰を待ってるの?」
丞介「うん・・・おじさんの子供達かもしれない、奥さんかもしれない、おじさんにも解らないんだ」
結「変なの!」
丞介「(笑う)変だよね・・・。」
結「もう、帰らなきゃ!(振り返って)おじさんの待ってる人。来るといいね。じゃ!」
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